助六② ~ キセルの雨が降るようだ

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いまも昔もヒトの考えることって実はあんまり変わらない。
日本舞踊のストーリーを読み解いて、そこに登場するキャラクターたちの現代にも通じる想いを
お伝えしていきたいと思います。
もしかしたら、あなたの悩みを解決するヒントがみつかるかも…

今回は、江戸庶民の理想像そのもの、江戸吉原で大人気の江戸一番の伊達男、花川戸助六のお話です。

|花川戸 助六

助六は、お芝居から派生して日本舞踊の演目にもなっています。おしゃれでイケメン、喧嘩が強くて男気も
溢れていた助六とはどんな人物だったのでしょう。

|江戸っ子の憧れ

黒い小袖を着ながして、赤い褌に黄色い足袋、これだけでもパッと目を引くファッションの助六ですが、
その他の部分にも細かいこだわりがあります。着物は、徳川将軍をはじめ大名や旗本など殿様の普段着だった
黒羽二重に五つ紋で、五つ紋には色ざしで「杏葉牡丹(ぎょうようぼたん)」、これに緋色(濃い赤色)の襦袢
を合わせています。この「杏葉牡丹」の由来は、
あの大奥史上最大のスキャンダル「絵島生島事件」まで遡り
ます。この辺りのことは、「絵島⑥ ~「絵島生島事件」その後」でもお話していますので読んでいただけると
嬉しいです。ちなみに、この「助六由縁江戸櫻」に登場する助六の兄役の白酒屋新平衛、実は曽我十郎祐成を
最初に演じたのは、「絵島生島事件」の生島新五郎だったと言われています。
頭に結んだ江戸紫の鉢巻は、本来結び目を左に巻く「病鉢巻」とは反対の右に結んでいます。医療が発達して
いなかった時代、紫草(ムラサキ科の多年草)の根には解熱、解毒の薬効があり、これで染めた紫色の鉢巻を
結び目を左にして額に巻くことで病状を軽減できると考えられていました。助六は敢えて逆に締めることで
みなぎるパワーを表現しています。また、紫は青と赤の中間色で、京の古代紫は赤みが強く、江戸紫は青み
がかっています。都の雅(みやび)を表す京の古代紫に対し、新興都市だった江戸の活気を表していたかの
ような江戸紫の鉢巻はまさに江戸のシンボルだったのではないでしょうか。
さらに、
腰には鮫鞘一本差(脇差)、印籠を提げ、背中には尺八、雨も降っていないのに桐柾の下駄を履いて、
手には紋入りの蛇の目傘。おしゃれな江戸っ子の代名詞のような派手な出で立ちです。
そして、毎晩のように吉原に通い、紛失した友切丸の行方を捜すためとはいえ、誰彼かまわず喧嘩を吹っ掛けて
いますが、地位や権力に関係なく弱い者を助けるような
人情に厚い一面もあり、これがまた江戸庶民の間で人気
だったようです。
ちなみに、敵役の髭の意休は亀甲模様や雲龍模様が金の糸で刺繍された衣装を着ています。いかにもお金持ちと
いった絢爛豪華なファッションは、江戸庶民にとっては野暮そのもので、助六の粋を際立たせてる演出になって
います。

江戸東京博物館所蔵 初代歌川国貞作 「助六所縁江戸桜 河原崎権十郎相つとめ申候」
https://museumcollection.tokyo/works/6240158/

|大口屋 暁雨(おおぐちや ぎょうう)

助六のモデルになったといわれている人物は何人かいますが、そのうちの一人とされているのが蔵前の札差、
大口屋暁雨です。江戸時代、芝居町や吉原で豪遊して粋を競った通人「十八大通(じゅうはちだいつう)」の
筆頭で、気前がよく、芝居のほかにも俳諧や骨董などにも通じた文化人でした。芝居小屋や役者を援助し、
特に二世市川團十郎の贔屓筋で、助六と同じファッションで吉原を闊歩し、「杏葉牡丹」に替えて「大福」の
紋をつけていたので「そりやこそ福神様の御出で」と騒がれ「今助六」と評判だったといいます。
主に宝暦年間(1751-1763年)から天明年間(1781-1788年)は、景気よく遊里で一晩にたくさんの金銭を
蕩尽して派手に遊ぶのがもてはやされましたが、文化文政期(1804-1829年)頃になるとたったこれだけの
費用でこんな遊びができたという方が遊び上手で、本当の通人と見られるようになっていきました。
バブル期から現在にかけての経済感覚の変化に似ていますね。

|キセルの雨が降るようだ

吉原遊郭で大人気だった助六は、吉原の遊女たちが吸いつけ煙草を次から次へと渡してきました。「キセルの
雨が降るようだ」とは、モテてモテて仕方がないという意味なのですが、助六は嫌味なくサラッと言います。
吉原をはじめとする遊里では、張見世と呼ばれる遊郭店先の格子の中で遊女たちがずらりと並んでお客を待って
いました。そこへやってきて品定めをするお客の気を引くために、煙草を詰めたキセルを一口吸いつけて火を
つけてから懐紙で拭って差し出したのが吸いつけ煙草ですが、誰彼構わず渡しまくるというわけではなかった
ようです。差し出すか差し出さないか、受け取るか受け取らないか、という恋の駆け引きに欠かせない重要な
アイテムでした。そんな恋のアイテムだった吸いつけ煙草を雨のように受け取るという助六のモテっぷりは
半端ないのです。

江戸東京博物館所蔵 歌川芳艶作 「花川戸助六之図」
https://museumcollection.tokyo/works/6244147/

|最後に

いかがでしたか。髭の意休との対比させる演出を差し引いたとしても、とにかく助六はカッコイイ!!
歌舞伎や日本舞踊の演目に登場する人物のなかでも1、2を争うカッコよさです。(個人的には断トツの
No1ですが…)
そして、そんな助六の恋人が三浦屋揚巻です。
次回は、三浦屋揚巻のお話です。

 

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