八重垣姫④ ~ 奥庭狐火

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いまも昔もヒトの考えることって実はあんまり変わらない。
日本舞踊のストーリーを読み解いて、そこに登場するキャラクターたちの現代にも通じる想いを
お伝えしていきたいと思います。
もしかしたら、あなたの悩みを解決するヒントがみつかるかも…

今回は、「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」のあらすじ後編、日本舞踊でも踊られることが多い
「奥庭狐火」からのお話です。

|あらすじ

前回の「十種香(じしゅこう)」までのお話で八重垣姫と武田勝頼はやっとハッピーエンドを迎えたように
見えましたが、まだまだ試練は続くようです。

|十種香のラスト

実は、前回お話した「十種香」には続きがありました。長いやりとりの末やっと気持ちが通じ合った2人の
もとに八重垣姫の父親、上杉(長尾)謙信が現れて、箕作に諏訪湖の対岸にある塩尻へ書状を持って行くよう
使いを頼みます。実は、謙信は箕作が本物の勝頼だということを見破っていて、塩尻からの帰りを襲撃して
討ち取ろうとする計略で、勝頼が出発すると、すぐに追手を差し向けます。濡衣のことも「武田の回し者」と
見破っていた謙信は、詮議のため奥へと引っ立てていきます。

江戸東京博物館所蔵 初代歌川国貞作「五衣色染分 赤」
https://museumcollection.tokyo/works/6233397/

|奥庭狐火

ひとり残された八重垣姫は、命を狙われている勝頼をなんとか救い出そうと考えます。諏訪湖の対岸にある
塩尻へは、通常ならば船で渡ればいいのですが、湖面が凍っているので船を出すことはできません。
迂回した陸路は、父親の謙信が放った追手が先に行っているので、女性の足で追い付くことができません。
途方に暮れた八重垣姫は「翅(つばさ)が欲しい、羽が欲しい」と嘆きます。そして、勝頼の実家、武田家の
守り神である諏訪法性兜に縋ろうと、奥庭に祀られている兜に必死に祈ります。すると、兜を手に取って池に
映した八重垣姫の姿は狐の姿に変わっていました。八重垣姫は、諏訪明神の白狐の霊力で狐火に守られて兜に
導かれるように、氷結した諏訪湖上を塩尻めざして駆けぬけてゆくのでした。

「諏訪法性兜」を所蔵している下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館

|結末

現在では、多くの歌舞伎や日本舞踊は「十種香」「奥庭狐火」で終わります。
では、その後どうなったのでしょう。そもそも将軍足利義晴を暗殺したのは誰だったのでしょうか。

|真犯人

「奥庭狐火」の段で凍った湖面を渡った八重垣姫の様子を見守っていた今は亡き将軍足利義晴の正室は何者かに
撃たれてしまいます。撃った犯人は奥へ逃げ込もうとしますが、謙信の息子、景勝と信玄の息子、勝頼に前後を
塞がれます。そして、武田家の軍師、山本勘助が現れ謎解きが始まります。かつて上杉家に領地を奪われて
将軍家に恨みを持っていた美濃国、太田道灌の末裔、斎藤道三は、北條氏時に賄賂を贈り手を組んで将軍暗殺を
実行していました。

|黒幕

実は、上杉家と武田家は将軍暗殺の犯人をあぶり出すために不仲を偽装していたのでした。それでも悪あがきを
する斎藤道三ですが、撃ち殺したはずの将軍の正室が自身の娘にすり替えられていたことがわかると、自分の
計略が完全に敗北したことを悟り、道三は自害します。ちなみに、すり替えられて殺された道三の娘は、勝頼の
身替りに切腹した箕作の恋人、濡衣でした。道三は今際の際、上杉、武田
両家の計略を褒め称え、北條氏時の
居城、難攻不落と言われた小田原城の攻略法を教えます。その後、黒幕の北条氏時は捕らえられ、諏訪法性兜は
無事に武田家に戻されます。八重垣姫と勝頼の婚儀も成立し、景勝、勝頼は後に名を残すこととなります。
江戸の歌舞伎では、景勝と勝頼が、濡衣の供養のため、討つべき敵は北条氏時だという理由から道三を見逃し、
戦場での再会を宣言して幕引きとなる演出になっていたといいます。

|最後に

いかがでしたか。「本朝廿四考」は全体を通してみると、たくさんの人物が登場する上杉家と武田家の戦いに
足利幕府のお家騒動まで絡めた壮大な戦国物語ですが、歌舞伎や日本舞踊では、そのほとんどが八重垣姫を
中心に「十種香」と「奥庭狐火」だけを抜き出して恋物語として上演されています。
勝頼に一途に恋する八重垣姫の純粋な想いが時代を超えて多くの共感をよぶからなのでしょう。
きっと誰もがそんな恋を心から応援したいと思うから…

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