外郎売② ~ ういろう、江戸へ

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いまも昔もヒトの考えることって実はあんまり変わらない。
日本舞踊のストーリーを読み解いて、そこに登場するキャラクターたちの現代にも通じる想いを
お伝えしていきたいと思います。
もしかしたら、あなたの悩みを解決するヒントがみつかるかも…

元(中国)から持ち込まれ、京都で広まった薬「ういろう」は同じ愛称のお菓子「ういろう」とともに
関東に伝わります。そして、人気商品としてさらに世に広まっていきます。

|小田原へ

外郎家二代目の大年宗奇(たいねんそうき)が、博多から京都へ移り住んで以来、外郎家は足利幕府の
医官を務めていました。五代目藤右衛門定治(とうえもんさだはる)の頃には、八代将軍足利義政から
武家としての宇野姓も賜るほどになっていました。
ところが、応仁の乱で京都の治安が悪化してくると、
薬をつくるような環境ではなく、家の存続さえ危ぶまれるほどだったため、家を二分する決断をし、
五代目は京都の本家を弟に譲り、伊勢新九郎盛時(後の北条早雲)の招きを受けて小田原に移住しました。
京都上流階級との取次役、また豊富な知識を持つ軍師として期待されてのことだといいます。北条家から
厚遇され、北条家の勢力拡大とともに領地を拝すると同時に、「ういろう」を製造販売する特権商人でも
ありました。
ちなみに、京都の本家は、その後薬屋へと転換します。蹴鞠の達人でもあった九代目外郎右近正光が
「高足(こうそく)」という技が蹴鞠の伝統を継承する飛鳥井家の家法に触れ、伊豆大島に遠島となった話が
残っています。江戸元禄期頃までは薬屋として存続していたようですが、その後は歴史から姿を消しています。
一方、小田原の外郎家は、約100年にわたって北条家に重臣として寄与していましたが、1590年の豊臣秀吉の
小田原征伐により状況は一変します。武家の地位を捨て商人となり、そのまま存続が認められ、江戸時代には、
小田原藩の特権商人として優遇され保護されてきました。500年以上経った今も一子相伝のういろうの製造法は
二十五代目の当主に引き継がれています。

|大ヒット商品へ

薬のういろうは、頭痛、腹痛、食あたり、動機、息切れ、咳や喉のつかえから口臭予防に至るまで効果のある
万能薬として小田原の発展に寄与していました。江戸時代には、東海道九番目の宿場町、小田原宿の名物として
知られるようになり、持ち運びに便利な道中薬として多くの旅人が買い求めました。
江戸から東海道を巡って伊勢神宮を参拝し、さらに京都と大阪を巡る弥次さん喜多さんの自由きままな珍道中を
描いた、十返舎一九作の滑稽本「東海道中膝栗毛」には、薬とお菓子のういろうを勘違いして食べる場面も登場
しています。
また、江戸で大人気だった二代目市川團十郎は、咳と啖の病気に罹って台詞が言えなくなり、舞台に立てなく
なった際、薬のういろうを服用して症状が回復し、無事に舞台復帰することができたといわれてます。
その感謝の気持ちと、このような良薬を世の中に広めたいという思いから、外郎家の承諾を得て、1718年、
江戸森田座で「若緑勢曽我」(わかみどりいきおいそが)の中で外郎売の姿で登場し口上を述べます。
実は、この外郎売は、「曽我物語」で父親の仇、工藤佐衛門祐経を討とうと変装して近づく曽我五郎時致だった
というお話です。ちなみに、外郎家は店頭売りだけで、行商売りはしていなかったので、衣装や台詞などは全て
二代目市川團十郎が創作したのだそうです。
この外郎売の見せ場はなんといっても口上です。
喉の痛みに効果覿面なういろうの効能だけでなく、東海道名物
や言葉遊びも織り交ぜて小田原の魅力までアピールしていて、その面白さは大評判となり、商品プロモーション
の域を遥かに超えるものとなります。そして、後に「歌舞伎十八番」に名を連ね、現在のような単独上演として
台詞芸を魅せる「外郎売」へと変わっていきます。

|最後に

いかがでしたか。江戸時代には、たくさんの行商人がいて江戸の町を活気づけていたといわれています。
万能薬の行商はありそうなのに創作だったとは驚きです。
次回は、現在も発音のトレーニングに使われている「外郎売」の口上にチャレンジです。
お楽しみに!

 

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