涼み舟② ~ 江戸の夏(庶民編)

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いまも昔もヒトの考えることって実はあんまり変わらない。
日本舞踊のストーリーを読み解いて、そこに登場するキャラクターたちの
現代にも通じる想いをお伝えしていきたいと思います。
もしかしたら、あなたの悩みを解決するヒントがみつかるかも…

今回は、江戸庶民の夏の過ごし方についてのお話です

|夏の過ごし方~庶民編

現在、私たちはエアコンや冷蔵庫などを利用して夏の厳しい暑さをしのいでいますが、
このような便利な道具がなかった江戸時代、人々はどのように夏を乗り切っていたのでしょうか。
江戸の町には、暑さを味わいながら過ごすさまざまな工夫がありました。

|夏支度

軒先に掛けられた葦簀(よしず)や簾(すだれ)は、日差しをやわらかく遮りながら、風をよく通して
家の中を涼しく保ち、外からの目隠しの役割もありました。そして、見た目にも涼しげな打ち水は
温度を下げるだけではなく、アスファルトで舗装されていなかった道に舞い上がる土埃を防いでいました。
また、実際に気温が下がるわけではありませんが、目や耳からも涼を取り入れていました。
金魚は、江戸中期に武士の副業として大量養殖が始まると、庶民でも手に入りやすくなっていました。
現代のような水槽ではなく、当時は陶器の鉢や木製のたらいなどで飼育されていて、真上から鑑賞するのが
主流でした。そのため、この時代の品種改良で誕生した蘭鋳(らんちゅう)に背びれはなく、その代わりに
ひらひらと大きく発達した尾びれが特徴で、水の上から覗き込むと大輪の花が開いたように華やかで美しい
姿をしています。
風鈴もまた、ガラス技術が広まった江戸後期には量産が進み、庶民でも気軽に買えるようになっていました。
「風鈴売り」は、売り声ではなく天秤棒に吊るしたたくさんの風鈴から「チリンチリン」と涼やかな音を
響かせました。この当時は、全面を赤色(朱色)に塗ったものが主流で、風鈴の音色と赤色には魔除けや
疫病退散の力があると信じられていました。そのため、一年を通して軒先や縁側に吊るす家も多かったと
いいます。

文化遺産オンライン 歌川国芳作 「金魚づくし 玉や玉や」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/553490

|夏の生活リズム

江戸の町は、太陽の高さで時刻を決める不定時法で時を刻んでいました。そのため、昼間が長い夏は早朝の
涼しいうちから働きはじめ、日中の暑い時間帯は仕事のペースを落としたり、長めの休憩(昼寝)をとったり
して、季節に寄り添ったリズムで過ごしていました。
朝早いうちに仕事を片付け、お昼過ぎには銭湯で汗を流して、午後はゆるやかに過ごします。
そうして日が傾く頃、夕涼みへと出掛けました。ひんやりとした風が通る川沿いには夕暮れどきの散策を
楽しむ人々で賑わったといいます。
この時間帯には、昼間から売り歩いていた行商人のほかにも、金魚売りや玩具屋などの夜店が並ぶこともあり、
子どもたちも心を躍らせました。こうした夏ならではの夕涼みは江戸庶民の楽しみのひとつでした。
しかし、こうした夏の過ごし方も商家で住み込みで働いていた奉公人たちは例外でした。朝から晩まで一日中
働きづめだった彼らに夕涼みを楽しむ余裕はありませんでした。しかし、旧暦7月16日の「後の藪入り」と
呼ばれた休日だけは、主人にもらったお小遣いなどで束の間の夏を楽しんだといわれています。

|夏の食

涼を呼ぶ食べ物や飲み物も江戸の夏には決して欠かせない存在でした。
浮世絵にもよく登場する西瓜は人気のご馳走で、井戸水で冷やして夕涼みに食べることが最高の贅沢
だったといいます。赤い果肉を食べたあとの白い部分は、刻んで塩漬けやぬか漬け、煮物にしていました。
集めた種は、天日に干して香ばしく炒り、塩を振ってお酒のお供やお茶請けとして無駄なく食べ切って
いました。

また、「ひゃっこい、ひゃっこい(冷たい、冷たい)」の呼び掛けで売られた冷や水は、井戸水や湧き水に
砂糖や白玉団子を入れて甘くし、錫(すず)や真鍮(しんちゅう)の金属製の器で出されました。

このような金属の器は、手に取った瞬間キーンとした冷たさが伝わるため、五感で涼しさを味わう粋なこだわり
だったといいます。

ほかにも、香ばしく煎った大麦を煎じた麦茶を売る「麦湯(むぎゆ)売り」、発祥地の京都烏丸(からすま)
にちなんだカラスの団扇や扇子を手に持って、枇杷(びわ)の葉に漢方を配合して煎じた飲料を売り歩いた
「枇杷葉湯(びわようとう)売り」、夏バテ防止飲料として広く重宝された「甘酒売り」などの行商人の姿も
見られました。

夏の涼味の「心太(ところてん)売り」も大人気で、四角い木箱を担いで「天突き」という実演販売を行って
いました。黒蜜をかけて甘いスイーツとして楽しむ上方とは違って、江戸では酢醤油や二杯酢に和からしで
味わうのが定番でした。割り箸一膳で食べるほど高価ではないからと、一本の箸だけで食べるのが一般的で、
勢いよくズズッと啜り込む豪快な食べ方がせっかちな江戸っ子のお気に入りだったといいます。

また、現代でも滋養強壮のためによく食べられる鰻は、当時も夏の風物詩のひとつでした。

江戸東京博物館所蔵 渓斎英泉作 「十二ヶ月の内 六月 門涼」
https://museumcollection.tokyo/works/6231152/

|最後に

いかがでしたか。
江戸庶民の夏を乗り切るさまざまな工夫には驚くばかりですが、暑い夏に涼を届けてくれる行商人たちの姿は
現代のデリバリーサービスのようでなんだか親近感をおぼえます。
次回は、武士たちの夏の過ごし方のお話です。

 

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